アイルランドの伝統音楽は、アイリッシュダンスと密接に関わりあっています。そのほとんどがダンスのための音楽です。

アイリッシュダンスは、トラディショナルダンスと、それが発展した競技スタイルのモダンスタイルダンスなどがあります。アイリッシュダンス、といえばリバーダンスをイメージする方も多いでしょうが、アイルランドでは、お年寄りも踊ることができ、観光客もすぐに覚えられるセットダンスがよく踊られているようです。勿論セットダンスは、トラディショナルダンスです。サマースクールやフェスティバルでは、バンドによる生演奏を入れたダンスの集い(ケーリーと呼ばれています)が大人気でした。

↓ケーリー。ウィリークランシーサマースクールにて。演奏は、大人気のタラ・ケーリーバンド。
ケーリーバンド

友人に誘われて僕も参加しましたが、隣の人のダンスを見ながらすぐに楽しめました。

ダンス

↓映画「タイタニック」のワンシーンのよう。みんな心から楽しんでいるようです。

楽しそう!

みんなでダンス

ダンスチューンは、テンポやリズムによって何通りものスタイルに分けられ、 その中でもよく耳にするのは、リール、ジグ、ホーンパイプという3種類ではないでしょうか。

リールが一番多く、4分の4拍子で速めのテンポで演奏されます。

ホーンパイプは、リールに近いですが、少し遅めで、アクセントが2拍目4拍目です。

ジグは8分の6拍子で3連譜のリズムです。

文字で書くとこんなものですが、実際のリズムや、グルーブ感は言葉では言い表せません。

アイルランド音楽の口承性と地域性

アイルランド伝統音楽は、数え切れないほどの曲が口承で現代まで伝承されてきました。つまり人と人の口と耳によって伝えられてきたものです。文字を持たず、口承によって文化を伝えるケルト民族の影響が大きいといわれています。その曲の数は、数千はくだらないと思われます。おそらく、全ての曲を知っているプレーヤーはいないと思います。

現代ではCDに録音されたり、楽譜にされたり伝統音楽が持つ口承性、地域性が薄れつつありますが、まだまだ伝統は途絶えていない印象でした。

特に、伝統音楽は、地域で育まれた独自のスタイルをしっかりと伝承しているようです。

たとえば、僕が出合ったクレア地方のフィドラーは、ドニゴール地方のフィドルを聞くと、外国語のように違いを感じる、と言っていました。同じように弾けない、ということです。僕が実際に聞いても違いが聞き取れるほど違いました。リズム、アクセント、修飾音が違うし、そもそも好んで演奏される曲が違うようでした。

ドニゴール地方は、スコットランドの伝統音楽の影響を受け、アイルランドの他の地域にはないレパートリーを数多く持っています。特にフィドルの演奏スタイルは独特で、ハードロックのようだ、とたとえる人もいます。

クレア地方は、ゆったりとしたBGM的な曲調が多いといわれています。西クレアあたりの曲は独特なうねりをもつ曲が多いように思います。

この違いは、クレア、ドニゴールなどそれぞれの地方で、演奏が非常に上手で神様のようにあがめられていたプレーヤーの演奏技術が、その地方の若いプレーヤーに影響を与えて、その地方特有の奏法といわれるまでに引き継がれ築かれてきたものらしいです。現地のプレーヤーから聞いたお話です。

マーティン・ヘイズがいます